書籍紹介
- 著者:平木典子
- 出版社:金子書房
- ページ数:190
ざっくり要約
- アサーションとは相手を尊重しながら意見を伝える方法
- アサーティブになれないのは自分の感情を把握してないから
- 人は生まれながらにしてアサーションの権利がある
- 非合理的な思い込みがアサーションを妨げる
- 日常会話と議論の場でアサーションを使い分けよう
- 非言語的なテクニックもアサーションには重要である
感想
アサーションはアメリカ発祥の心理療法の一つでした。攻撃的に自分の感情を主張するわけでもなく、引っ込み思案に押し黙るわけでもなく、相手を傷つけずに、自分の素直な感情を伝えるテクニックとして開発されました。今では日常やビジネスなど、様々な場所で活用できるコミュニケーション技法として広まっています。
今回紹介するのはそんな「アサーション」についての本です。著者は心理学博士課程を修了した臨床心理士。専門的な分野の話ですが、平易な言葉でアサーションの概要について説明していてわかりやすい。ページ数は少なめなので読みやすい本でした。
「意見を言いたいけど、相手を気にして黙ってしまう」「パートナーとコミュニケーションが上手くいかない」というような人間関係に悩んでいる方はオススメです。
相手は変えられない
読んでて感じたのがアサーションは「相手を変えることを目的にしていない」ということ。あくまで自分の感情・意見を素直に表現することにフォーカスしてるから、相手の意見や行動が変わることは期待してないようです。もしアサーティブに自分の希望を伝えた時に相手が変わってくれたとしても、それは「相手の意思によって変わることを決めた」だけであって、自分が相手を変えたとは考えません。
繰り返しますが、「相手は自分の思い通りには動かない」のです。でも、あなたの気持ちや考えを分かって相手自ら言動をかえてくれることはあるのです。
平木典子『改訂版 アサーション・トレーニング』p.120
たしかに、アサーションは相手の自由を尊重しながら自分主張するわけなので、相手の意思決定を本人に委ねるのは納得ですね。
ラス・ハリス氏の『相手は変えられない ならば自分が変わればいい』を思い出しました。こちらは認知行動療法のACTを活用してパートナー関係を考え直そうという本。パートナーの思考・行動・感情はコントロールできないことを認めた上で、付き合っていこうね的な内容が書かれています。
ACTは自分のメンタルケアのために開発された心理療法ですけど、アサーションと共通点があるなーと思いました。
いつもアサーティブにならなくてもいい
こちらも読んでて意外だったポイント2。いつでも四六時中アサーティブになる必要はないということ。
この本では、あくまでアサーティブになる「権利がある」ということを伝えています。アサーティブになってもいいし、ならなくてもいい。あなたには意思決定の自由がある。でも、その結果の責任はちゃんと自分で取ろうね。といった感じです。
アサーション権にはもともとこの権利も入っているのですが、ここであらためて取り上げたのは、「アサーションしてもよい」となると、つい「アサーションしなければならない」になってしまう人が多いからです。この人権は、アサーションができるようになったら、アサーティブにしないことも選べるという意味です。
平木典子『改訂版 アサーション・トレーニング』p.74
アサーションの本なので、てっきり「アサーティブになろうよ!みんなと優しいコミュニケーション取ろうよ!」と押し売りを予想してたんですが外して意外でした。
正直、常にアサーティブなコミュニケーションを考えていたら疲れてしまいますよね。自分にとって大切な人、仕事上で重要な人など、要所で使い分けられるようになりたいところです。
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