スポンサーリンク

仮面の告白 – さらけ出せない本当の自分

小説

読んだきっかけ

ぶっちゃけ「本を処分しようとしてた友人からもらった」これに尽きます。

日本文学は明るくないので、たぶん自分からは手を伸ばさなかったと思いますね。守備範囲外のジャンルを教えてくれる友人を持てて感謝です。人の縁で出会う本もまた良き。

ということで、せっかくもらったし、有名な作家だし、一回挑戦してみるかーという具合で読んでみました。なお三島作品は他にも4〜5冊を受け取った模様。加速する積読。

ざっくり要約

  • 同性愛者である主人公の物語
  • 幼年〜大学生時代を描く
  • 心理描写がインテリ
  • 本人の性指向と、世間から求められる振る舞いの間での葛藤が表現される

感想

もし今の時代に出版されれば、LGBTとかセクシャルマイノリティ系の本として分類されるんでしょうか?

「世間の認識を改めたい」とか「自分の苦しみをみんなに伝えたい」といった世間に訴えたい雰囲気はではない小説。「仮面の告白」というように、物語の大半が主人公の心理描写や考えている事で占められています。とても内向的で独白のような内容でした。

当時の日本は異性愛が「当たり前」で同性愛は白い目で見られるような社会。だからこそ「告白」と名付けたのだと思います。今まで秘めてきたものを意を決して伝える感じ。

園子のキス以降からの面白さ

僕は第三章後半のキスシーンから面白さが加速したように感じました。ここを境に一気に読んでしまった・・・

ここ以前の主人公は自分の性指向をそこまでハッキリ自覚していない状況です。「よくわからないけど男の人に惹かれる」「よくわからないけど女性には愛欲が湧かない」といった感じ。でも園子とキスした瞬間に、主人公は男性にしか愛欲を感じないと一瞬のうちに理解してしまう

私は彼女の唇を唇で覆った。一秒経った。何の快感もない。二秒経った。同じである。三秒経った。―私には凡て(すべて)がわかった。

出典:三島由紀夫『仮面の告白』第三章 p.185

ここの描写が非常にドラマチックで、読んでてハラハラした。主人公が自身の指向について分かってしまった時の落胆も伝わってくる。

これ以降からは主人公の本心と慕ってくる園子の気持ち、世間の常識、同性愛者であるがゆえに社会のはみ出しものに感じてしまってるところとか、ぐちゃぐちゃな感情が伝わる。

マイノリティを許さない社会

こうした葛藤や不幸は結局マイノリティを許さない社会から来てるんだなーと読んでて感じました。

こうした社会であるがゆえに、主人公は男友達と馴染もうと本心を曲げて振る舞い、風俗に行って世間から勝手に決められた「まともさ」を証明しようとする。19歳の女の子とキスをして恋人になれるのか試そうとする。本来の自分を親しい人に伝えられなくて苦しむ。

マイノリティを許さない社会は古くか存在するけど、あれはOKこれはダメと、周りから勝手に生き方を決められるのは息苦しい。誰もがいつ「少数派」として括られるかわからない。多様性を受け入れられない世界は嫌だなーと感じました。

コメント