読んだきっかけ
いつも読んでる書評ブログでレビューを読んで気になったので読んでみました。
あと、僕はもともと英文学専攻ということもあって、興味を持った次第です。
ざっくり要約
- 『フランケンシュタイン』を題材にして文学批評理論を解説
- 批評理論は「内在的アプローチ」と「外在的アプローチ」に分かれる
- 内在的アプローチは小説本文を対象にして分析するアプローチ
- 内在的アプローチでは15ポイントに絞り、題材作品に当てはめながら解説
- 在外的アプローチは小説の外にある世界と結びつけて議論するアプローチ
- 在外的アプローチの部では13の批評スタイルを簡潔に紹介
感想
大学の講義でちょいちょい批評理論の話が出てきたこともあって、聞き馴染みのある単語もあって理解には困らなかったです。「物語世界内語り手」とか「三人称の語り」とか懐かしさを感じる。
第一部の小説技法篇では物語を書く際のテクニックが、上記のポイント以外にもたくさん解説してます。しかも『フランケンシュタイン』という1つの具体例で検討しているので、分かりやすい。
なので、本書を読む前に『フランケンシュタイン』を一度読んでおけばよかった後悔。もちろん簡潔なあらすじも書いてあるわけですが、あらかじめストーリーを把握しておいた方がもっと本書の解説が理解できたなーと。
第二部の批評理論篇では、いよいよ本題の各諸説をコンパクトにまとめて紹介。
「フェミニズム批評」とか「ジェンダー批評」なんかは授業でかじった覚えがあるので馴染みがあったけど、他にも多様な批評理論の特徴を解説していて勉強になりましたね。1つの作品でこんなにも様々な視点で批評・評価できるもんなんだと。
正直、日常的に小説を読む時はこんな距離を置いた読み方はしてなかったなと思います。しいて言えば、「地の文」つまり語り手は誰れなのか?ぐらいにしか気は巡らなかった。より作品を深く楽しみたいという時に良いヒントを教えてくれる本でした。
批評家になるつもりはないなら・・・
ぶっちゃけ第二部はそんなに深く読まなくてもいいかなーと思いました。
第二部以降の批評理論は、要するに数多くある小説の解釈(批評)の仕方を説明するにすぎない内容。でも結局は小説の内容そのものを語るんじゃなくて「私はこんな解釈をします」という理論の話が中心。
それってやっぱり研究者とは専門家の世界なので、日常的に読む小説に果たして活かせるかといったら疑問といったところ。なので「小説にはこういう読書の視点もあるんだなー」程度の読み方でもいいんじゃないかと。
とはいえ、いつもの読み方にメタ的な視点を与えてくれる良い本だなとは思います。メタ視点で小説を読めれば作者の意図が推察しやすいし、意図が分かると物語の本筋を追う以外にも楽しみ方が広がってくるもんです。
ストーリーやキャラクターに共感するという一般的な小説の楽しみ方の他にも、新しい味わい方を教えてもらえる本でした。
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