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恋するアダム – アンドロイドは電気恋人の夢を見るか?

小説

読んだきっかけ

インスタグラムで友達が読み始めたという投稿を見たのがきっかけ。

イアン・マキューアンはお気に入りの作家の一人。さっそく読みました。

ざっくり要約

本作の主人公チャーリー、32歳。独身。職を転々としており、今は投資でなんとか生活をつないでいる。
平凡な彼はアパート上階に住むミランダに恋していた。彼女は22歳で社会史の研究をしている学生。
そんなチャーリーは、母から相続した財産を使って超高性能アンドロイド、アダムを購入することにした。

アダムは全世界のネットワークにアクセスすることができ、人間社会の知識を蓄積・学習していく。特に詩などの文学作品が好み。
人間社会に慣れ始めたアダムはミランダとも交流するようになり、親交を深めていく。
時を経るにつれて、徐々に自我が形成されてきたアダムは主張する。「自分には心があり、ミランダに恋している」と。

感想

平凡な独身男と自我を持ったアンドロイドの共同生活を描いたSF小説。人工知能という今っぽい要素を取り入れつつも、舞台を80年代にせっていしてるのが面白いです。

本来の史実とは真逆な設定にしているのも特徴です。なぜかアラン・チューリングは生きていて、しかも人工知能を発明したことに。イギリスはフォークランド紛争に負けて、その責任を取ってサッチャー首相は退任します。

ここらへんは英国史や世界史を知らない人は読んでて混乱するかもしれません。イギリスの小説なので、背景的なことは説明がなく当たり前って感じですね。

訳者あとがきで、このあたりの話について触れているので、先に読んでおくと理解しやすいかもしれないです。

話が脱線しがち

今作はキャラクターに語らせて話が冗長になった印象を受けました。

チャーリーやアダム、チューリングがもう、しゃべるしゃべる。とにかく論じたがるので物語の本筋を忘れかけることも・・・

脱線話がけっこうボリュームあったので、これは著者の持論を登場人物を通して述べているのかなーと思えますね。

憎めないアンドロイド

本作品のアンドロイドは超合理的だけど誠実な性格であるように設計されているらしく、嘘がつけないです。

そんな彼らが非合理的な人間たちがいる社会に放り込まれるのだから大変。アダムは素直に本心を話す一方で、誠実であるがゆえに法律は絶対遵守。人間であれば黙っていることも見逃せません。

この性格が災いして物語終盤で事件が起こります。でも憎めないんですよね。素直で悪意がないからか。

自我を持った人工知能が人間社会に入ったらどうなるか?という著者の思考実験なのかなーという気がしてます。

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