読んだきっかけ
読書系Youtuberが紹介してた動画を見て知ったのがキッカケ。
西洋絵画を見るのが好きなので美術展に行った時に、より楽しめる知識が学べるかもしれないと思って読んでみた。
ざっくり要約
- 絵画鑑賞の初心者は絵を「見て」はいるが「観察」はしていない
- 「観察ポイント」を知れば芸術家でなくとも絵は鑑賞できる、楽しめる
- 数々の名画を例に挙げて、6つの観察ポイントを解説
感想
率直に読んでて楽しかった。絵に施された画家の技術の解説とともに、紹介される名画がいくつも出てきてペラペラとページをめくるだけでも楽しい。好きな絵画が例題に出てきた時はテンション上がるなー。
全体を通して「絵を見るってこんな視点なんだ!」と驚ろかされる。これぞ「鑑賞」って感じ。美術展に足を運んで絵をただ眺めてるだけな僕はこんな視点は持てなかった。
やっぱり知識として学ぼうとしないと身につかないなと。そんな技術を本書では「ビジュアル・リテラシー」と呼んでいる。まさしく芸術家の意図を読んで理解できる知識が垣間見れた。
文学批評との類似
本書において「センス」とは「直感で抱いた印象を言語化して他者に伝える能力」と言及している。センスを養うためには鑑賞を行う枠組み・思考を学ぶ必要があるよね、という趣旨。
要は芸術家の視点を見てみましょうということ。その視点を学べば一枚の絵を分析してより深く楽しめるというの本書のテーマ。
ふと、なんだかこれって文学の批評にも似てるなーと思った。
小説の批評でも、それ専用のスキームで文章を精査して、作家の狙いを読み解こうとする。そしてなぜこの小説は良い・悪いのかを論じる。やってることは意外と一緒なのかもしれない。
小説にせよ絵画にせよ、作者の意図を読み取り、「なぜこんな印象を持つのか」を分析できるようになると、楽しみが一層増す。
作品を表面的にだけでなく、裏側までわかると一度で二度美味しいと感じれる。文学批評に関心がある人にも刺さる本じゃないかと思う。
「好き嫌い」と分析は切り分ける
美術の話とは関係ないけど良いなと思った内容。「主観的な好き嫌いと客観的な分析は切り離して考えよう」という著者の考えに納得&賛成だった。
好き嫌いを感じる事と、造形が成功しているかどうかを理解することは別なのです。
出典:秋田麻早子『絵を見る技術』p.280
こんなふうに「自分の好き・嫌い」と「作品の客観的な特徴」が分けられるようになると、楽しみ方の幅がぐっと広がると思います。(中略)
出典:秋田麻早子『絵を見る技術』p.281
それに、自分と違う意見や好みに対しても、もっと適正に受け止め、議論し合う共通の基盤にもできるでしょう。そうすればお互いを尊重し、寛容になれるんじゃないかな、と思ったりします。
本来は美術批評の精神性を語っている文脈だけど、日常のコミュニケーションでも当てはまるよなーと妙にうなずいてしまった。
例えば「この人のことは嫌いだけど、言ってることの筋は通ってて正しい」とか。好き嫌いとロジックは分けなきゃいかんと改めて思った次第。
本書を読んだら何かしらの美術展行きたくなること間違いなし。アートが好きな人(特に絵画!)は読んでみて。
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